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Revision as of 09:48, 5 October 2007 by 81.209.83.254 (talk)(diff) ← Previous revision | Latest revision (diff) | Newer revision → (diff)い魔法の薬である。西欧諸国はすでに大量にこれを服用し、次の荒療治に移りつつある。政財官勢力・知識人・マスコミが総動員で、大量の「引締め」と「犠牲」の新薬を抵抗なく社会に飲みこませるため、前代未聞の協調的攻勢をかけている。 EU委員会は、規制緩和と公営部門(通信・電気・鉄道・航空)開放を乱暴に推進することも忘れず、マーストリヒト条約、1999年1月1日の統一通貨導入のキャンペーン活動に走っている。加盟諸国の財政赤字の国内総生産(GDP)に対する比率は平均4.4%であるが、これを条約の要求する3%の水準に引き下げるための様々な対策が支援されている。
だが構造調整のショックを吸収するには経済成長予測はあまりぱっとせず、1996-97年の失業率は労働人口の11%、1800万人レベルにとどまる見込みである。EU委員会の予測では「失業率はドイツ・オーストリアなどではかなり増加し、フランス・ベルギー・ポルトガルでも悪化するだろう(4)」。サンテールEU委員長は「雇用促進のためのヨーロッパ信用協定」を提唱して、ストラスブールの欧州議会に、次いで6月14-15日のローマでの閣僚・経営者・労働組合三者会談に、さらに6月21-22日のフィレンツェ欧州理事会にかけた。雇用促進協定というよりも雇用抑止協定と言ったほうがよかろう。実質的に求められているのは労働条件、特に労働時間のフレキシビリティと、公的支出・課税の削減なのだから。
競争力に関するアドヴァイザリー・グループ内も同様の意見である。同グループは、イタリア元首相でイタリア銀行総裁のチアンピ氏が新内閣の蔵相に任命されるまで委員長を務め、多国籍企業の経営者・元閣僚・労働組合幹部をメンバーとし、雇用コスト、特に社会保障費の大幅な低減、賃金の引下げ、最低賃金の見直しを加えた「社会協定」と、労働者の地域間移動の増大、コスト・利益に関連する社会立法の見直しなどを提言している。こういった「社会協定」なるものが、大量解雇を「社会プラン」と称する経営者の真似しがたいユーモアの一変種でないとしたら、何を反社会協定と呼んだらよいと言うのか?
構造調整策は、こうしてヨーロッパ全土でさりげなく実行に移されているのである。
国別の処方 ドイツでは4月26日にコール首相の経済引締め計画が出され、主に高齢者・病人・失業者・被扶養家族への風当たりを強くして来年には500億マルクを節約しようとしているが、その一方、ぱっとしない景気と税収低下のために追加予算の削減ないしは付加価値税の15%から17%への引上げが予測される。コール首相は1月23日に労働組合・経営者と「雇用と競争力のための協定」を結んだが、その後これは一方的に破棄された。雇用維持と30万人の雇用創出とひきかえに、労働・賃金のフレキシビリティの増大、定年の後退と退職年金の下方修正、失業手当の削減、企業負担の税金(事業税・資本課税)の引下げが計画されている。蔵相は財政赤字制限立法による仕上げをはかっているが、ブンデスバンク総裁はまだ不充分と見なしている。 イタリアでは、ディーニ前内閣の下で1993年に行われた物価スライド式賃上げ制廃止を皮切りに予算削減と年金制度の大改正が続き、「オリーヴの木」中道左派連立内閣も経済引締め政策を強化しようとしている。欧州経済通貨連合に何とか滑りこむために、プロディ首相は「引締め」と「さらなる犠牲」を約束した。1997-99年度の経済・財政計画案を待ちつつ、まずは教育・医療支出と公共サービスへの補助金をカットする修正予算案で財政赤字が制限される。他方、増税圧力は今後2年にわたって高いままと思われ、新たな民営化計画も発表もされた。
スペインのアスナール保守内閣は、教育支出を含む支出の削減、公務員ポストの削減、企業への補助金の削減によって「予算調整政策をうまくやる」ことを考えている。民間企業・資産家に対する課税の大幅な引下げ、ピケ産業相による民営化・自由化・規制緩和計画も考えられている。
ベルギーのデハーネ首相は、経済引締め「合理化」政策、つまり財政支出・健康保険の削減、公共サービス補助金・公共投資・省庁予算カットによるドラスティックな財政赤字削減のための特別権限を、5月13日に議会から取りつけた。2月に行われたフランス語中等教育機関における3000人の雇用削減は未曾有のストを引き起こした(5)。
フランスのジュペ首相は、昨年冬の大規模な抗議運動(6)にもかかわらず、公営部門の解体計画をあきらめていない。社会の反対を封じこめる首相の統治能力にいらだつ市場の圧力により、規制緩和と 通信(フランステレコム)・エネルギー(フランス電気公社)・交通(国鉄・公団・エールフランス)・郵政・宇宙産業・軍事産業などの公共サービスの民営化が約束された。引き続き行われている国営企業の清算・民営化にあたっては公的資金が導入されて、資本が与えられ、負債は納税者の負担で穴埋めされた(7)。銀行・保険・製造業など、あらゆる産業部門が民営化の対象とされている。政府は、1993-94年に企業・資産家におよそ1兆フランの減税を行った後、1995年にはそれに見合った増税を行い、高所得者減税をちらつかせながら1997年度の引締め予算を準備している。
今年度は500億フラン近く、来年度には800億フランにのぼると見られる健康保険の財源も見つけなければなるまい。ジュペ保守政権は、昨年9月の公務員賃金凍結の発表の後、「肥大化」を非難される公務員への風当たりを強め、来年度には 2万から2万5000のポスト削減が行われる可能性がある。これには野党の一部メンバーも賛成しており、シャラス社会党上院議員は、「公務員にのみ我々の赤字の責任は押しつけられない(8)」としながらも、「利己主義の徹底的な排除」と「支出引締めの継続」を促すが、コストは高いが役に立たない上院を廃止することには取り組んでいない。
スウェーデンでも構造調整計画がある。社会民主党政府は、傷病保険、失業・育児休暇手当を削減した後、退職年金、住宅援助、医療支出に手をつけることに決めた。
こういった構造調整の動きはイギリスには見られない。付け加えて言えば、原子力の民営化の他には、たいして調整するようなものは残っていないのだ。10個の良好状態の原子力発電所を、古いものについては高くつく維持費用は国家負担として、新品価格で売ることならできる。
左右を問わずスペインやイタリアの新内閣は、他のヨーロッパ諸国同様、まず「国際金融界が納得がいくように」(アスナール首相)、国民に「さらなる犠牲」を強いながら「市場の信用を獲得・維持する」(プロディ首相)ことを望んでいる。
投資家というハゲタカたち 投資家は、ヨーロッパ各国で日程にのぼる国営企業・公共サービス民営化の甘い蜜をむさぼり、リストラ、資本集中、TBO、新たな市場分割などの「朗報」に喜ぶ(9)。さもなくば、英米の業界用語でいう「ハゲタカ資金」(資本化された一般大衆の預金・退職金から成ることも多い)は、巨大な損害が納税者により穴埋め(今世紀最大の税金の無駄遣い)された後に銀行やディベロッパーが安値で買い取った各地の不良土地債権に群らがる。 常に「神経質で」「懸念して」「動揺して」いる市場の前に、政治家も癒着業者もひざまずく。市場は、いかがわしい、猫かぶりの、厚塗りの化粧が崩れた売春婦のように酔っぱらった目を世界に釘付け、強欲だが卑屈な若いトレーダーの群に取り巻かれている。精神を病んだトレーダーたちは、あらゆる悪いニュースにそわそわと高騰で応え(2600人の解雇の発表はフランスのムリネックス社の相場を20%上昇させた)、最近のアメリカのように、賃金引上げや雇用創出の見込みがわずかでもあると「何てことだ! 奴らが得するってことは、俺たちにはまずいリスクってことだ」と寒々と低落で応えるのだ。
西欧では、フランス経済統計調査局の最近の報告に見られるように、国富の着実な増大の一方で、大多数の人々の購買力・社会保障は低下し、失業と生活不安が増加しているが、企業利益・資本所得・少数者の資産は膨れ上がっている(10)。第三世界が忍び寄っているのだろうか?
6月初めには、30万人のアメリカ人が生活保護の削減に抗議してワシントンでデモ行進を行った。「何もかも国家におんぶにだっこと信じている者たちとの名誉の戦いだ‥‥ 連中はあらゆる改革を妨げるために生活保護で暮らしている」というのが、20%の子供が貧困ライン以下、10%が赤貧という国、アメリカ(11)の共和党のコメントである。経済自由主義の別のモデル国であるイギリスでは、18歳の少年の就学率は、他のヨーロッパ諸国の5人に4人に対して2人に1人にすぎない。下院の調査によると、16歳以下の子供150万人が非合法で、しばしば危険な労働条件の下で就業しており、とりわけメージャー首相の地元選挙区では著しい(12)。
フランス経済統計調査局の別の調査によると、生活不安は増大し、4分の1の人々が過去2年以内のうちに失業の経験があるという(13)。60万人の若者が職業斡旋所に通い、そのうち20%のみが仕事口を見つけ、いつ切られるかわからない無期限契約にサインした。その他の者の多くは、工場では「まっとうで正直な程つぶされる」と言う26歳の工員のように(14)臨時雇いのその日暮らしを何年間も強いられている。
6月15日の土曜日には、35万人と戦後ドイツ最大規模のデモがボンを行進した。デモを組織したドイツ労働総同盟(DGB)執行部の言葉を借りれば「ぞっとするカタログ」であるところのコール首相の経済引締め計画への反対デモである。「政府の行っていることは経済政策ではなくて、持たざる者のポケットから金を取って持てる者のポケットに入れているだけだ。(中略)経営者は利益をあげるほど横暴になり、雇用を削減し、労働コストの低減を求めている(15)」と参加者の一人はコメントしている。「私はフランス国旗をもってデモに来た。12月のフランスの運動は立派な前例で、サラリーマンが政府と経営者になすがままにさせてはおかないという警告だと思う(16)」と別の者が言う。大衆は、自分が首を吊られるための紐をおとなしく買いそうにはない。
(1) 「国際化と自由化の時代の発展」(UNCTAD第9回会議事務総長報告、ジュネーヴ、1996年)